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イスラエルの風
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B.F.P. Japan理事長(エルサレム在住)スティーブンス・栄子 2003年4月

 イスラエルには農業やハイテクと、いろいろ産業がありますが、その中でも外貨収入が最も大きいのが観光産業でした。聖書の舞台であるイスラエルに関心がある人はもちろん、聖書に関心のない人々も、医療・美容の両面ですばらしい効能をもつ死海の恩恵を受けに来ていました。

 エルサレムの旧市街にあるヴィア・ドロローサは、イエス・キリストが十字架を担がれ、ゴルゴタの丘まで歩まれた「苦しみの道」としてよく知られています。キリストの成してくださった愛の御業に感謝しながら、2千年前の様子を思い浮かべつつ歩みたい道です。しかし実際には、賛美をしながら歩むグループ、十字架を背負いながら歩むグループ、買い物をしてもらおうと大声で呼び掛ける物売りなどで騒がしく、とても思いに浸るどころではありません。しかし、2000年9月から始まったインティファーダ、それに続く2001年9月11日のアメリカの同時多発テロ以来、イスラエルを訪れる人々は徐々に減り、今では驚くばかりの静けさとなりました。

 先月そこを久しぶりに歩きましたが、地元の人々の往来が少しあるだけで、ガラガラの状態でした。道を歩く人々の顔が暗く感じられます。しつこく買い物をねだる物売りたちも、「どうせ買わないのだから」と言わんばかりに、ひねくれた目で見つめるだけです。いつも親切にしてくれた店に寄ってみると、そこに店主の姿はなく、扉はしっかりと閉められていました。

 1992年にイスラエル政府公認ガイドの免許を取得以来初めて、一番忙しいはずの春に仕事が全くありません。久々に長い自由時間なので、少しガリラヤの方へ行こうとホテルの予約を入れてみると、週末しか営業していないと言われました。週末にわずかに集まる地元の人で、なんとか命をつないでいる様子です。以前は、前々から予約を入れなければ泊まれないほど混んでいたのに、本当に驚きです。

 顔なじみのバスの運転手に、久しぶりに会いました。忙しくてなかなか家族のところに戻れなかった彼が、レストランで働いたり、タクシーの運転手をしたりしていました。ガイドとして活躍していた人がタッパーのセールスをしていたり、道路で物売りをしていた人が八百屋で働いていたりと、さまざまな人々の人生が転換している様子です。しかし、働き口があるだけ彼らは幸せです。大きなレストランや店が閉鎖され、その店主も従業員も仕事がなく、食べていかれない状況なのです。

 エルサレムにいくつもあったダイヤモンド工場は、今やすべて破産状態です。これらの工場には多くの人々が働いていました。ホテルが経営破たんし、雇われていたたくさんのユダヤ人やパレスチナ人が仕事を失って苦しんでいます。

 状況の良い時には行列をなしていた旅行者も、今は途絶えてしまいました。空っぽになったヴィア・ドロローサを見る時、「人々から見捨てられてしまった……」と孤独を深めている、イスラエル人の心を見るような思いがしました。相次ぐテロや戦争の影も、彼らの心を疲れ果てさせ、打ちのめしています。

 
 
 
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