B.F.P.Japan「月刊オリーブ」編集長 石田
陽子 2002年8月
子どもにとって、親の愛情は自分を育んで守ってくれるものとして、何にも変え難い、深く豊かなものです。しかし、その愛情すら、間違った方向に進むと、逆にその子どもを滅ぼしかねないというケースがあることを、次のパレスチナ人の母親のケースをとおして思い知らされました。
アラーに息子を捧げた母親
「息子が死んだ、と聞かされたとき、私は喜びの叫び声を上げました!」 これは、2週間前に3人のイスラエル兵士を殺害して死んでいった、テロリスト男性の母、ナイマ・アル=アベドが語った言葉です。「私は息子に、ジハード(聖戦)への愛と、アラーのために死ぬことを教え込んできました。」 息子のムハンマドは、イスラエル人を殺して殉教するべきかどうか、母親に相談しました。
「ムハンマドが『事を起こす決断をした』と私に告げたとき、私は彼を祝福し、励ましました。彼がどれだけそれを成し遂げることを願っていたかを知っていたからです。息子が使命を果たすために出て行った日、失敗せずに成し遂げられるだろうか……と思い悩むあまり、その日は料理することができませんでした。彼が自爆テロを必ず遂行できるよう、私は心の底から神に祈りました。」
「息子が出て行ったその日の午後、家のドアをノックする音が聞こえました。きっとムハンマドがテロに成功し、殉教したことをだれかが伝えに来たに違いない! 私は、近所中が飛び起きるような喜びの叫び声を上げました。しかしドアを開けると、立っていたのはなんと、死んだはずのムハンマドでした。息子の顔を見て、私は彼に向かって叫びました。『お前は気が変わったの? 死ぬのが恐ろしくなったのか!』 彼は、イスラエル兵士が来るのを待ち伏せる作戦を考えていましたが、その日は兵士が通らなかったというのです。――そして2日後、息子は見張りの班からイスラエル兵が通るという連絡を受けました。息子はシャワーを浴び、祈りを捧げ、そして家を後にしました……。」
その後、ムハンマドが自爆テロの実行犯の一人として死亡したことを、この母親ナイマは、ハマス(武装テロ集団)から告げられたということです。
ナイマが息子を愛していなかった、とだれが言えるでしょう。しかし、彼女の愛情は、偽りの信仰に支配されるあまり、完全に間違った方向へ、最終的には死へと息子を導いてしまいました。背後に働くイスラム過激派による洗脳の力が、ナイマのみならず、今やパレスチナの多くの母親のうちに働いています。このようなケースは、パレスチナにおいて後を絶ちません。テロを実行して死んでいった少年たちは、イスラムの英雄としてたたえられ、遺族は、殉教者の遺族として特別の栄誉を受け、パレスチナ自治政府から賞金を支給されるのです。家庭教育のみならず、パレスチナの教育システム全体が、今や「テロリスト大量製造プログラム」と化しています。 |