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◆神の子
 ルカ伝2章41節から51節には、イエスが12歳の少年だった時、エルサレムにとどまって神殿の庭で学び、学識あるラビたちとトーラーについて論じ合っている記事があります。彼はナザレヘの帰路についていた旅行団から離れ、大急ぎで探しに戻ってきた両親に見つけ出された時、こうおっしゃいました。

 「どうしてわたしをお捜しになったのですか。わたしが必ず自分の父の家にいることを、ご存じなかったのですか。」と。ここでイエスが神について用いたことばは、普通に使われる“アベイヌ”(私たちの父)ではなく、“アビ”(わたしの父)でした。

 ユダヤ教の会堂で捧げられるの祈りには「天にいます、私たちの父(アベイヌ)よ」という表現が含まれています。イエスは弟子たちに、「主の祈り」を教えましたが、それもまた「天にいます私たちの父よ」で始まっています。“アビ”という表現は、当時のユダヤ人には不適切と思えたに違いありません。ただ一度だけ、神が「わたしの父」として言及されている箇所が、詩篇89篇の中にあります。この箇所では来たるべきメシアについての預言が語られています。「彼は、わたしを呼ぼう。『あなたはわが父(アビ・アター)……。』」(26節)。 そしてイエスは、これを成就されました。

 真のメシアだけが神を「わが父」と呼ぶ権利をもっています。晩年のロバート・リンゼイ博士は、イエスのみことばの研究で第一級の学者でした。彼は、イエスの時代のラビたちが、「天にいます私たちの父よ」と言うように人々に教えた理由は、「わが父よ」と言う権利が、メシアにだけ保留されていることを知っていたからだ、と言っています。

 第二サムエル記7章14節にも、メシアに関する預言が含まれています。「わたしは彼にとって父となり、彼はわたしにとって子となる。」 この節は神の子であるメシアの来臨について、ユダヤ人が理解するようになった始まりについて記しています。

 12歳の時には、イエスはすでにご自分がメシアであり、神の子であることを知っておられたことが明らかです。そして彼は、神をわが父と呼ぶ権利を主張しました。これこそ、ルカ伝2章51節で「母(マリヤ)はこれらのことをみな、心に留めておいた。」と書かれている理由です。彼女もまた、御子と父なる神との関係を理解していました。

 この概念はメシア預言である詩篇2編でさらに拡大して表されています。1節から2節には「なぜ国々は騒ぎ立ち、国民はむなしくつぶやくのか。地の王たちは立ち構え、治める者たちは相ともに集まり、主と、主に油を注がれた者(メシア)とに逆らう。」とあります。7節には「あなたは、わたしの子。きょう、わたしがあなたを生んだ。」と書かれています。

 通常、“生んだ”と訳されるヘブライ語は、実際は「もたらす」とか「産出する」を意味し、助産婦や医師が新生児を取り上げ、差し出している姿を示しています。イエスのバプテスマの時、神は彼が御子であることを世に告知されましたが、そのときに引用されたのがこの詩篇でした。「きょう、わたしはわが子をもたらした。」
 
 
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