イエスは、神殿の聖域から両替商たちを追い出し、そのような行為を許していた祭司たちを、「神の家を強盗の巣にしている」と激しくしかり付けられました。さらに、神殿の広場で、目の見えない人たちと歩けない人たちを癒やされました。人々が彼を「ダビデの子にホサナ」と救世主の称号で呼ぶのを聞いて、祭司たちが「腹を立てた」とあります(マタイ21:15)。当時、自分がメシアであることを名乗る人々が多く出ており、祭司たちにとって、イエスはこうした詐欺師の一人でした。
◆たとえのユダヤ的背景
「悪い農夫」のたとえは、民衆にとって非常に身近な、よく知られている社会習慣でした。この中で、地主は自分の土地を賃貸に出しています。当時の習慣として、新しく土地を貸し出す場合、地主は最初の数年間、借り手である農夫が事業建て上げのために必要な経費を肩代わりしました。そして、借り手には、3年、あるいは4年目に、地主が負担した費用の部分的返済として、収穫された産物の約40%を引き渡すことが約束されていました。
こうした合意の下、地主は自分の分け前を受け取るために、一人のしもべを農夫たちのもとに遣わしました。このたとえ話に登場する農夫たちは悪い考えをもっており、負債を支払いたくなかったので、このしもべをめった打ちにして帰らせました。
ここでイエスは、このたとえにショッキングなひねりを入れています。地主は自分が当然受ける分を徴収するために、愛する息子を送り出したのです。「愛する息子」とは、ヘブライ語で「一人息子」に相当します。農夫たちは、この一人息子がいなくなれば、その土地に対する自分たちの権利を主張できると信じ、彼を殺しました。イエスは、地主が悪い農夫たちから土地を取り上げ、彼らを追い出して、新しい良い実を付ける人々に渡されるという結末を語られました。
◆たとえの真意
祭司たち(そのほとんどがサドカイ派)は、ヘロデ王が権限をもち始めると、彼に取り入って勢力を伸ばしていきました。神殿にはもともと大祭司が立てられていましたが、ヘロデは彼を暗殺し、ヘロデに追従したユダヤ人、シメオンを大祭司として立てました。以来、大祭司は王家に多くの賄賂を贈って、神域での役職と権限を獲得していきました。(マタイ22:16、マルコ3:6、12:13)
ヘロデはまた、サンヘドリン(議会)にいた45名の裁判官や長老を殺し、代わりにサドカイ派から選んだ者たちをその役職に就けました。こうして、サンヘドリンはヘロデとローマの下で支配され、紀元70年の神殿崩壊までの40年間、裁判や会議が開かれたことは一度もありませんでした(ヨセフスの記録より)。こうして、一般民衆は、腐敗しきった祭司を毛嫌いするようになりました。ヘロデ派最後の祭司がカヤパとアンナスで、新約聖書にも登場します。
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