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 キリスト教の「慈愛の精神」を示す代わりに、残虐な行いが各地で始まりました。十字軍が聖地に向けてヨーロッパを横断中、各地のユダヤ人共同体を襲撃して、暴行、略奪に次ぐ略奪を行いました。十字軍が発した「ユダヤ人は我らの救い主を十字架につけた者たち。彼らは主に立ち帰るか、そうでなければ死あるのみ!」という野蛮な叫びに直面して、ユダヤ人には「死か改宗か」という二つの選択肢しか残されていませんでした。何千何万という人々が、死をもって殉教する選択をしました。エルサレムにおいては、赤い十字のシンボルが描かれた盾を掲げ、ユダヤ人たちをシナゴーグごとに集めた十字軍が、「主キリストよ、あなたをあがめます!」と歌いながら、生きたままユダヤ人たちを焼き殺しました。

 そのような背景から、ユダヤ人にとって十字架とは愛と和解と救いではなく、憎しみと死のシンボルとして映ることに何の不思議があるでしょうか。十字架はユダヤ人に対して剣として用いられたのです。

◆第4回ラテラノ公会議
 1215年、第4回ラテラノ公会議が催されました。この会議において、全質変化(神学用語。聖体祭儀のとき、パンと葡萄酒をキリストの肉と血に変えること)の神学が具体化されました。この教義は、キリストの肉体と血が、聖体(あるいはご聖体。聖餐式用のパン)とワインに象徴されるという考え方です。この教義は、現在でもいまだにカトリック教会において信じられています。この教義と、会議で決定された他の教義をもとにして、反ユダヤ主義の新たなる流れが形成されました。

  • 聖体冒涜
    何世紀にも亘って、ユダヤ人による聖体冒涜の噂が流布しました。その噂とは、ユダヤ人が聖体を盗み、キリストを再び十字架につける意味でその聖体を傷つけ、痛めつけて燃やしてしまうというものです。単なるでっちあげに過ぎないこの聖体冒涜ついて描いた絵物語が、おもにドイツを中心として14世紀から15世紀の間に流布しました。
  • 血の中傷
    聖体冒涜に関する噂の中でも特にユダヤ人を中傷したものが、「血の中傷」と呼ばれるものです。これは、ユダヤ人が非ユダヤ人、ことにキリスト教徒を殺害してその血を集め、過越の祭りや他の祝祭に用いるというものです。キリスト教徒の血を飲むことによって、ユダヤ人は人間の外見を保つことができ、またその血によってユダヤ人としての匂いを消して、キリスト教徒の清らかさを備えることができるというのです。
    この他にも、ユダヤ人がキリスト教徒の赤ん坊を誘拐して、過越の祭り用のマナ(種なしパン)を作っているというものがあります。これらの中傷は、ユダヤ人が守っている「血を食べてはならない」という掟に対しての、キリスト教徒の無知を示しています。
  • ユダヤ人識別用の目印
    第4回ラテラノ公会議において公布されたもう一つの掟は、ユダヤ人を区別するために、何らかの目印を彼らの身につけさせるというものです。この目印は国々によってさまざまですが、一般的にバッジをつける、あるいはとがった帽子をかぶるという形が取られました。クリスチャンがうっかりとユダヤ人と接触してしまうことがないように、というのが目的です。中世の絵画や彫刻では、丸のついた装束やとんがり帽子をかぶっているユダヤ人が描かれています。
 
 
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