B.F.P.Japan事務局長 石田 陽子 2004年11月
ここ数年幼い子どもたちが殺される事件が後を絶たない。先日も栃木県小山市で、二人の子どもたちが同居していた大人の手によって無残に殺された。子どもたちはずっと虐待を受けていたという。そして―忘れもしない、あの池田小学校で多数の小学生を手にかけた殺人犯に、9月14日死刑が執行された。最後まで悔い改めの言葉はなかった。
何もかも恵まれた時代、安全な国に生きているというのに、なぜ無防備の、無抵抗の子どもに、大人たちはあんなにひどいことができるのだろう……死の間際に「助けて!!」「許して!!」「怖い!!」と何度も叫んだであろうに……人間の罪深さとは言え、あまりにもつらい事件が多過ぎる。そんな中、「ユダヤ人であるがゆえに」ナチス・ドイツで殺された150万人の子どもたちのことを思った。
子どものホロコースト体験がつづられた書物としては、圧倒的に『アンネの日記』が有名である。『子どもたちのホロコースト』(ローレル・ホリディ編/横山緝子訳、小学館、1997年刊)には、11人のユダヤ人の子どもたちが実際に記した日記が収録されている。
ページをめくるうちに、子どもたちの息遣い、恐怖、怒り、願い、希望が感じられ、60年以上も前の彼らの日常が、私の日常に入ってきたような気がした。昔から変わらぬユダヤ人の教育水準の高さもあるのだろうが、どの子どもも若年でありながら、文章表現の豊かさ、冷静な現状記録、そして思想の深さに脱帽する。
抑圧された環境の中で、ドイツ人やかつての隣人だった大人たちから暴力を振るわれる中、彼らにとって日記は、心ゆくまで思いをぶちまけることができる唯一の逃げ場だった。
人間が人間に対して、どれだけ残酷になれるかという貴重な記録が日記にはつづられている。第一に登場するマチャ・ロルニカスという少女の日記の冒頭では、ゲットーの中で目撃した悲惨な光景が展開する。
ある女性は死の瀬戸際でありながら、出産直前であった。まともに歩くこともできず、両手両足ではいずりまわりながら、激痛のたびにけいれんしていた。――蛇のようにのたうちまわった末、息を引き取ると同時に赤ちゃんが生まれた……。
こんな現実を毎日見ていたら、人はどうなってしまうのか。マチャは大変な恐怖を覚えながらも、彼女が目にした日常を克明に記した。収容所で、仲間の遺体から服を剥ぎ取り、口から金歯を抜き取る作業をさせられた。たった14歳で……。自分ならとっくに発狂してしまうだろう……これが正直な感想だ。
いろんなケースの子どもたちが登場する。ある少年は、ユダヤ人としての出生を隠してベルギー人に混じって安全に暮らしていた。しかし、自分の状況が恵まれていればいるほど、苦しみの中にある同胞のことを思って虚無感に襲われる。
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