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 しかし、人間は、悪へと傾く罪の性質を宿していると同時に、自分の創造者を求める「永遠への思い」も心に植え付けられている。つまり、だれもが心の平安や満たしを受けたいと願っているのだ。学校に通い、普通の仕事をし、結婚して家庭生活に入り、子どもを育てるという通常の市民生活を送っている人々は、どんな思想や宗教を信じていようと、わざわざ戦争を望みはしないものである。人が死ぬのを見るのはだれだって嫌なのだ。

 それは、イスラエルに住むユダヤ人とアラブ人でも同じことである。

◆ユダヤ人とアラブ人の親交
 イスラエルの地に住むユダヤ人とアラブ人は、昔から争ってきたわけではない。イスラエルが独立してからも、両者が共存している町や村は少なくなかった。そして、報復合戦が続く今日でさえも、宗教・民族を超えて仲良くしようという一般市民の営みはある。

 そんな例を、『イスラエル・トゥディ』誌(2002年9月号)に掲載された記事から紹介しよう。記事には「2人の女性――年配のユダヤ人と若いアラブ人――がパレスチナ人の自爆テロをとおしてベストフレンドになった」というリードが付いている。

 アラブ系のイスラエル人ナハラー・アサッドさん(31歳)は、1994年、パレスチナ・アラブ人の自爆テロに巻き込まれ、瀕死の重傷を負った。一命は取り留めたが傷は残り、彼女は見捨てられたような状態に置かれた。まず、彼女の住む村の男たちが、傷のゆえに彼女を結婚の対象外とすると決めた。入院中、イスラエル国会に属するアラブ人議員も一人として見舞いには来なかった。そして、別のテロで彼女は親友を失ってしまった。バスの停留所で一緒に立っていたとき、テロ犯が車の中で自爆し、13人のユダヤ人とアラブ人を死に至らしめたのである。親友はその犠牲者の一人となった。ナハラーさんは今でもバスに乗るのは怖いという。

 憎しみに燃えても不思議ではないところだが、ナハラーさんは憎しみで人生を台なしにしたくはなかった。男たちに結婚する資格はないと見なされた彼女だが、よき伴侶を得、2人の子どもにも恵まれた。そして、新たに、ペツシー・ヒルドシャイマーさんという親友を得た。10歳のときルーマニアから移住してきた77歳のユダヤ人女性である。

 2人が知り合ったのは、8年前、ナハラーさんの親せきがペツシーさんのキブツで働いていたとき、ナハラーさんに起こった悲劇をペッシーさんに話したことから始まる。自爆テロのアラブ人犠牲者と聞いて、すぐさまペツシーさんは病院を訪問した。そこで頭からつま先まで包帯を巻かれ、ミイラのようになって横たわっているナハラーさんを見、ペツシーさんは彼女を心に留めるようになった。

 今、2人はこう確信している。「イスラエル・パレスチナ問題は男たちには解決できない。この争いをやめさせ事態を打開できるのは女たちだけである。」ナハラーさんは、テロ事件以来さまざまなことを経験し、またアラブの男たちのメンタリティを知って、意志の強い女性になったという。

 
 
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