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久留米キリスト教会 主任牧師 川端光生 2002年11月

◆多神教徒の固定観念に辟易
 この間、ノンクリスチャンの友人から、また同じ言葉を聞かされた。「一神教の民族は排他的で相手を受け入れないから、すぐ戦争をする。やはり多神教の寛容な考え方じゃないと平和にはならないね。」知人らのこうした固定観念に、私は長年悩まされ続けている。

 以前、そうではないことを歴史的事実を挙げながら説明して「なるほどなあ」という返事をもらったはずなのに、1年も経つとすっかり忘れてまた元に戻っている。特に、イスラエル問題となると、すぐに「排他的で頑固な一神教同士の争いの場」という発想で論を展開し始める。若い時に頭に埋め込まれた「一神教=排他的で好戦的、多神教=寛容で平和的」という図式はそう簡単には崩れないようだ。しかも、梅原猛さんなど名の知れた知識人が新聞や雑誌でそんな図式を盛んに宣伝するので、なおさら固まっていく。自分で歴史を調べれば簡単にわかることなのだが、日本人は大学の先生や評論家、知識人の言葉に弱いと言えるだろう。

 そもそも、世界最初の帝国アッシリア、バビロニア、ペルシャ、ギリシャ、ローマなど、近隣諸国を武力で侵略・征服し、弱小民族を支配してきた大帝国は、みな多神教である。一神教のユダヤ・キリスト教はそうした大帝国の軍事的猛威の中に産み落とされ、その圧迫と迫害を生き延びてきたのであって、むしろ「好戦的」からはほど遠い。また歴史上、最大の領土を征服したモンゴル人は多神教徒だが、その残忍さは比類なきほどである。多神教国家日本の歴史も同じように血塗られているし、明治以後は神道の神々(天皇の名)の下に侵略戦争を繰り返し、仏教もそれを支援した。トルストイなどは、日露戦争を仏教国とキリスト教国の戦争と見て心を痛めている。

 事実、「日本人=好戦的で残酷」という図式は、今もアジアの人々の心にしっかり焼き付いている。学生のとき、親しい韓国人に向かって、「日本人は多神教の海洋民族なので、元来は平和的な民族なんですよ」と日本の知識人の受け売りを言ったところ、「私たちは、日本人ほど残忍な民族はないと思っている」と憤慨されたことがある。私の知人は「イスラエル人も平和を求めているんだよ、と言われても説得力はないよ」と言うが、日本人が「多神教の民族は温和で平和的だ」と言っても説得力はない。

◆市民は平和を求める
 そもそも戦争を引き起こすのは宗教ではない。「宗教は怖い。宗教は戦争を引き起こす」というのも日本人の固定観念になっているが、実際には宗教がかかわらなくても戦争は起こっている。宗教は争いを起こすときの自己正当化に利用されるにすぎない。無神論者も無宗教者も争いや戦争は起こす。神を追放した唯物主義国家は戦争をむしろ是とした。では、何が争いを引き起こすのか。それはすべての人の心に巣食っている「罪の性質」である。人々がどんな思想や宗教を信じていようと、あるいは宗教を捨てようと、悪へと傾く罪の性質を宿しているかぎり争いや戦争は起こる。また、食糧不足、経済問題、領土問題、民族差別……などが戦争の直接的原因になるのでもない。そうしたときに生じる自己中心的な欲望(すなわち罪)が戦争を起こすのである。

 
 
 
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