5月2日、日曜日の午後、一人の女性が車を運転しながら、ガザ地区のキスフィーム道路を走っていた。彼女の名はタリ・ハトゥエル、34歳。ガザ地区で、社会福祉主事として、毎日忙しく動き回っていた。テロの犠牲者を慰め、困った人々に助けの手を差し伸べていた彼女が、まさか犠牲者そのものになろうとは、誰が予測できたであろう。
この日彼女は超音波検査を受けるため、アシュケロンへと向かっていた。同乗していたのは4人のかわいい娘、ヒラ(11歳)、ハダル(9歳)、ロニ(7歳)、メラブ(2歳)。今、妊娠8カ月になる、お腹に宿っている新しい命も含め、タリと夫・ダヴィドにとっては、何物にも変え難い宝物たちである。
と、そこに嫌な、重い、激しい連続音。ダダダダダダ……ン。銃の乱射音である。
発砲者は4人のパレスチナ人テロリスト。彼らが狙いを定めた車の中には若い女性、そして幼い少女4人の姿があった。しかし彼らはひるむことなく、銃弾の雨を、タリとその付近の車数台に浴びせ続けた。
車は急停止した。タリと少女たちの衣服は鮮血でみるみる染まっていく。
テロリストたちの発砲は、標的の息が完全に絶えるまで、途絶えることがなかった。こうして白昼、一瞬の内に、五つの命、そしてこの世に生まれ出ることさえかなわなかった、もう一つの命が失われた。その最後をみとる人もいないまま、“シェマ”の祈りが捧げられることもなく……。
この悲劇のニュースは、ダヴィド、タリの両親、兄弟姉妹に、そしてガザの住民に伝えられた。さらに、全イスラエルに、瞬く間に広まった。
「ごめんよ、タリ。怖かった、怖かったね。そばにいてあげられなくてごめんよ。おまえたちだけで死なせてしまったことを許しておくれ。ごめんよ、娘たち……お前たちとあまり一緒に過ごしてやれなかったお父さんを許しておくれ……。僕は絶対にお前たちを忘れないよ……」
写真上:泣き崩れる父親・ダヴィド
中:ハトウェル一家
下:ハトウェル一家の葬儀に参列した大勢の人々
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