ロシアの危険な状況
社会主義が崩壊したロシアは、民主主義国家としての道を歩み始めました。しかし、この数十年間、民主主義を経験したことがないリーダーたちが先頭に立っていますから、今なお暗中模索を繰り返していることは否めません。
社会主義思想は、依然として根強くロシアを支配しています。今後、社会主義国家と銘打たないまでも、いつ政治体系が一変してもおかしくない土壌は十分にできています。また、経済破綻による貧困と、マフィアの台頭により、人々の生活には絶えず重圧が掛かっています。
パンを奪われた人々は、抑圧された苦しみのはけ口を求めています。歴史的に繰り返される「経済崩壊後の反ユダヤ主義」は、間違いなくロシアの地でも広がっています。ロシアから帰還して来たユダヤ人の身の上話には、身震いを覚えます。そんな残酷なことが本当にあるのだろか……と思いますが、彼らが受けている迫害は、現実に起こっている出来事です。
一刻も早く、できるだけ多くの人々をあの悲惨な中から救出したい……「あと一人、あと一人……」と命のリストに名前を連ねていったシンドラーのように、私たちもまた必死なる思いです。いつ再び、鉄のカーテンが閉じてしまうのかわかりません。シンドラーが、最後は自分の持ち物まで売って彼らの命を救ったように、私たちも今できることを、主にあって精いっぱいさせていただきたいと願っています。

←祖国へと向かうバスの中で。
絶望の中で希望を得たマリア
マリア(92歳)はこの世に生を受けて以来、苦しみの中を生き続けてきました。彼女の夫と娘は、第二次世界大戦中に殺されました。二人が埋葬された墓は、後にののしりと害毒に満ちた落書きが書かれて荒らされてしまいました。この出来事は、マリアに大きな悲しみを与えました。現在マリアはたった一人で生活しています。
「キエフで私が知っていた唯一のユダヤ人一家はここを去りました。今、私は一人です。ときどき私が道を歩いていると、『見ろ、薄汚いユダヤ人がもう一人いるぞ』という声を耳にします。私の心は痛みます。私はもう92歳ですから、イスラエルに帰っても国家の役に立たないだろうと思いました。しかし、救出作戦のスタッフたちが、出国のための書類をそろえ、ビザの取得などを手伝ってくださいました。彼らは私を見るなり、彼らの肩に乗せて私を手続きに連れて行ってくれたのです。この歳になって約束の地に住めるなんて……。信じられないほどの喜びです。素晴らしい機会を皆さまが与えてくださいました。」 |